衛星データ

古代の海岸線と高麗郡建郡

古代の海岸線と高麗建郡1300年
                       中野 不二男
                    
 埼玉県西部の、秩父の山並みにちかい武蔵野の平野に、日高市という町があります。人口5万7000人ほどの、小さな市です。しかし江戸時代までは、周辺の地域をふくむ「高麗郡」という、比較的大きな郡の中心でした。
 かつての武蔵国に「高麗郡」が設置されたのは、西暦716年です。現在の日高市と飯能市をいっしょにしたぐらいの、小さな郡でした。
 2016年5月16日は、その「高麗郡」が建郡されてから1300年の節目で、日高市ではさまざまな行事が行われました。また高麗郡の初代郡司(現代でいう市長のような存在です)であり、1799人の高句麗人を率いてこの地を開拓した高麗王(こまのこきし)若光を祀る高麗神社では、本殿も改築され、外周の塀も美しい板材に一新されるなど、いかにも「節目」を感じさせる雰囲気になっています。今年の高麗神社は、にぎやかになることでしょう。

神奈川古代道路



 ところで、私は高麗郡の成立過程を調べている歴史学者でもなければ、遺跡や遺構の調査や発掘に携わっている考古学者でもありません。地球観測衛星のデータを利用して、さまざまな解析作業により古代地形を抽出する技術の研究をしています。とくに注目している地形は、古代の「畿内」、つまり現在でいう大阪平野を中心とする関西地方。それに古代「武蔵国」の北部、つまり埼玉県北西部や、古代「相模国」の南部、すなわち神奈川県南部の地形についてです。
「武蔵国」の北部と「相模国」の南部を調べるようになったのは、十数年まえに高麗郡建郡のことを知ってからです。高麗神社の歴史については、三十年ぐらい前からなんとなく耳にしたりしていたのですが、そのころは「なるほど、日高市というのは、古い歴史のある土地なのだな」というぐらいでした。

五領ヶ台貝塚


 そして今からちょうど10年前の2006年1月24日に、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の陸域観測技術衛星ALOS(エイロス:通称「だいち」)が打ち上げられました。東日本大震災の被害状況を的確に把握し、そのデータを世界に配信して、救援体制の構築に貢献した優れた衛星です。そのALOSが、打ち上げからまもなくして地上に送ってきた最初のデータを見たとき、「これで古代地形を調べることができるのでは・・・」と、ほとんど瞬間的に感じました。これがきっかけで、ALOSのデータを利用して古代の「武蔵国」や「相模国」を調べるようになりました。そして調べてゆくその過程で、若光の行動についても興味と疑問を持つようになりました。
(つづきは、メニューバーの「図書室」から「古代の海岸線と高麗郡建郡」でどうぞ)

もっともっと衛星データを2

もっともっと衛星データ(1)

「ALOS(だいち)」は、こんな衛星です。

 ALOSの、「AVNIR-2」についてのお話です。 もっと読む…

もっともっと衛星データを!

もっともっと衛星データ(1)

「ALOS(だいち)」は、こんな衛星でした。

 衛星による軌道上からの地球観測データについて、まだピンときていない学生がけっこういるので、わかりやすい説明を用意しました。
 地球観測衛星「ALOS(だいち)」は、2011年3月11日の東日本大震災で、被災状況確認にフル活用されたあと、5月12日に電力異常で運用が終わりました。寿命をうわまって働きつづけた”いい子”です。いまも「ALOS(だいち)」によって取得されたデータは、さまざまな分野でつかわれています。

 ただ、利用の範囲がまだまだせまいように思います。いわゆる専門家による利用がほとんどで、一般の人々にまではひろがっていません。ホントは、ちょっと学習すれば誰でもつかえる便利なデータなんです。

 たとえばこの画像は、「ALOS(だいち)」によって取得された地上のデータで、現代の景観を3次元で構築し、そのうえに古代の景観を再現したものです。だから遠方の山並みや周囲の景観も正確です。(埼玉県日高市の巾着田)
高麗郷_古代・現在
 これらをもとに、川の蛇行の変化や地殻変動の影響などをくわえて修正してゆくと、各時代における地形を、より正確に再現できるでしょう。歴史地理の研究にはもちろんですが、地域のPRやエンターテイメントにも活用できます。
 このCGは、例によって諏訪の後藤克典さんにお願いしたものです。
 動画は、本Webサイトの「図書室」→「Movie Gallerly」にあります。こんな使い方がるのか、と思っていただけはずです。

 本文も、ぜひごらんください。


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