6月 2015

もっともっと衛星データを2

もっともっと衛星データ(1)

「ALOS(だいち)」は、こんな衛星です。

 ALOSの、「AVNIR-2」についてのお話です。 もっと読む…

もっともっと衛星データを!

もっともっと衛星データ(1)

「ALOS(だいち)」は、こんな衛星でした。

 衛星による軌道上からの地球観測データについて、まだピンときていない学生がけっこういるので、わかりやすい説明を用意しました。
 地球観測衛星「ALOS(だいち)」は、2011年3月11日の東日本大震災で、被災状況確認にフル活用されたあと、5月12日に電力異常で運用が終わりました。寿命をうわまって働きつづけた”いい子”です。いまも「ALOS(だいち)」によって取得されたデータは、さまざまな分野でつかわれています。

 ただ、利用の範囲がまだまだせまいように思います。いわゆる専門家による利用がほとんどで、一般の人々にまではひろがっていません。ホントは、ちょっと学習すれば誰でもつかえる便利なデータなんです。

 たとえばこの画像は、「ALOS(だいち)」によって取得された地上のデータで、現代の景観を3次元で構築し、そのうえに古代の景観を再現したものです。だから遠方の山並みや周囲の景観も正確です。(埼玉県日高市の巾着田)
高麗郷_古代・現在
 これらをもとに、川の蛇行の変化や地殻変動の影響などをくわえて修正してゆくと、各時代における地形を、より正確に再現できるでしょう。歴史地理の研究にはもちろんですが、地域のPRやエンターテイメントにも活用できます。
 このCGは、例によって諏訪の後藤克典さんにお願いしたものです。
 動画は、本Webサイトの「図書室」→「Movie Gallerly」にあります。こんな使い方がるのか、と思っていただけはずです。

 本文も、ぜひごらんください。


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浅間山と寺田寅彦

寺田寅彦と浅間山の爆発
 
「ものごとをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」

 浅間山の火山性地震の発生頻度が、増加しているようです。ニュースを聞いて、寺田寅彦の言葉を思い出しました。
 寺田寅彦がこの散文を記したのは、1935(昭和10)年の夏の日でした。
 
 
昭和十年八月四日の朝、信州軽井沢千が滝グリーンホテルの三階の食堂で朝食を食って、それからあの見晴らしのいい露台に出てゆっくり休息するつもりで煙草に点火したとたんに、なんだかけたたましい爆音が聞こえた。「ドカン、ドカドカ、ドカーン」といったような不規則なリズムを刻んだ爆音がわずか二三秒間に完了して、そのあとに「ゴー」とちょうど雷鳴の反響のような余韻が二三秒ぐらい続き次第に減衰しながら南の山すそのほうに消えて行った。大砲の音やガス容器の爆発の音などとは全くちがった種類の音で、しいて似よった音をさがせば、「はっぱ」すなわちダイナマイトで岩山を破砕する音がそれである・・・。「寺田寅彦随筆集 第五巻」岩波文庫、

 冒頭にあげた寅彦の言葉は、この散文の中に出てきます。なんとなく日本人と科学技術の関係を連想させるようで、私は原稿を書くときなど、以前からよく引用してきたものです。

IMG_0092
昨年春の浅間山です もっと読む…

いま流行りの「説明不足」

RD-253 燃焼室2
 学食で、白身魚のフライ定食を食べながら。ある大学院生と雑談していたときのことです。かれがちょっと苛立たしげにいいました。
「メディアの解説って、経済や政治とかはいろいろやってくれるんですけど、科学とか技術になると、全然だめですよね」
 いま人気の解説者も、技術とかの話題はテーマにあげないじゃないですかと、なかばあきらめているという口調でいうのです。

 かれの気持ちは、よくわかります。マーシャル宇宙センターがあるアラバマ州ハンツヴィルへ留学していたかれとしては、各国の宇宙産業や、軍用と民生用の技術のバランスなどを考えると、日本のメディアのありかたには違和感を感じてしまうのでしょう。

 日本のメディアは宇宙開発にたいして、ある種のパターンをもっていました。いや、まだそうなのかもしれません。それは、ロケットの打ち上げや衛星の軌道投入の失敗に対しては、とにかく叩き、成功にたいしては、これまた途方もないぐらいに賞賛することです。後者については、「はやぶさ」の成功がまさにその典型です。

 忘れられない思い出があります。2000年の2月、宇宙開発関係の政府委員として、霞が関の会議に出ていたときのことです。午前中にはじまった会議中がそろそろ終わろうかというとき、名刺ほどの小さなメモをわたされました。その日の昼前に、宇宙科学研究所(ISAS)が打ち上げたM-Vロケットの4号機から、ダウンレンジ(ロケットと地上基地局との送受信)がとれないというものでした。その後も、南半球の基地局からの状況を伝えるメモが、何回かありました。いずれも、「ネガティブ」です。失敗かもしれない・・・。

 まもなく会議は終わり、ひとまず私は帰宅しました。家に着いたころには、軌道投入に失敗という連絡もありました。
 そしてまもなく、ある大手経済新聞の記者さんから電話があり、コメントを求められました。今回の失敗に対し、どう思うか、という質問です。いつものパターンですから、回答もいつもどおりです。

「原因がまだわかりませんから、とにかく調査をはやくやらなくてはなりませんよね。そのうえで、改修の必要があるなら改修して、できるだけはやく打ち上げを再開すべきでしょう」

 まだ原因がわからないのですから、そういう以外に言葉はありません。しかし電話の記者さんは納得できないのか、不満げにいいました。

「では、今後も宇宙開発を粛々と進めるべきだ、というお考えですか」
「もちろんそうです」

 ちょうど、中央省庁再編に向けて宇宙開発予算の削減も話題に出はじめていたころです。記者さんは、それにむすびつくコメントを求めていたようです。それなのに私が、「はい、粛々と進めるべきです」などと答えるので、ちょっとムッとしていたようでした。

 「はやぶさ」地球帰還のときのように、情緒にうったえてやたらと賞賛するのも問題ですが、失敗の原因がわからないうちから叩こうとするのも、いかがなものか、です。

 宇宙開発は、技術の世界であることはもちろんですが、そのいっぽうで国際政治や軍事・防衛とも深くからんでいるのが現実です。たんに失敗をバッシングし、成功を賞賛していればすむような世界ではないでしょう。
 しかし幸か不幸か、ここ20年近く、日本お宇宙活動は順調で、失敗らしい失敗は発生していません。そのため「宇宙開発は青少年の夢」とか、「次世代の夢」など、歯が浮くようなフレーズが、いまも生き残っています。さすがに「君もいつかは宇宙へ」という空手形を切る人やメディアはなくなりましたが・・・。

 ただ、大学生など若い人と話していて、たとえば国際宇宙ステーションISSなどを、額面どおりの「国際協調と次世代へ続く夢」のようにとらえている人が多いことに、正直なところ驚きます。成功という「安定」が続くと、こうなるのかもしれません。
 私としては、上述の大学院生のように、国際宇宙ステーションのありかたなどを、宇宙産業や国際政治の視点からとらえる若者にも育ってほしいと思っています。

 問題は、そういう視点で宇宙開発を考えるために必要な材料が、メディアからは得られなくなっていることでしょう。ならば宇宙開発関係のみなさんが、もっと積極的に情報を発信してはどうでしょうか。もっとも、いまだ現役の人たちにとってはやりにくかもしれません。しかしOBの人たちなら、それぞれの経験をとおして感じてきた、もっと具体的で厄介な部分も、うまく料理して発信できるのではないかと思います。
 最近の国会では、何かにつけて「説明不足」という表現が使われているようです。しかし宇宙開発の分野では、むかしから説明不足だったような気がしてなりません。

 若い世代に情報と知識を提供することは、とても重要なことです。最近、それを痛感します。非力ながらコツコツとやっていきますので、ご協力いただければ幸いです。

 このWebサイトの「宇宙開発」のページに、ロケット・エンジンにかかわる問題を書きました。のぞいていただければ幸いです。
(説明用のCGは、映画「テルマエロマエ」に描かれている古代ローマの景観を製作した、後藤克典さんの協力によるものです)


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